一体、何がしたかったのか?
1作目は確かに名作だった。
リアルタイムでタイラーの状況を把握しながら一緒に打開策を考えたあの日々。とても奇妙な感覚を与えてくれた。
しかし、このサイレントナイト(以下SN)は明らかに1作目や2作目とは劣る部分がある。それは選択式のノベルゲームでありながら結局一本道なのである。たしかに1作目の後半も「果たしてこれは選択させる必要があるのか?」と思わせる部分はあったがそれなりの結末が用意されていた。だがこのSNはトゥルーエンドに至るまでが「どれだけ船内を寄り道したか(言い換えれば、クライマックスに至るまでにどれだけアイテムを回収したか)であり、殆どの死因がその間のプロセスで回収出来なかったアイテムが手元にない為に「危険」への対策が出来ず死亡という形ばかりであり、さらに英雄的決断を選択しなければ、「待ち伏せされた」などと・・・。もはや察しろと言わんばかりの話のプロットはテキトーに作ったとしか思えない上、「待ち伏せされた」と言うのはタイラーが注意不足であることに責任があるのであり、我々の責任的要因にはなり得ない。こういう結末ばかりになると、もはやタイラーに対して「もうどうでもいいし、総当たりで正解を探そう」という感情が沸き上がってもおかしくなくなり、ゲーム本来が持ち合わせていたリアリティを相殺してしまうという結果を引き起こしてしまっているのだ。
長くなってしまい申し訳ないが致命的な点がもう1つある。
それはSNの新機能である「マップ」である。
一体、何がしたかったのか?
制作元曰く「一作目よりも状況を把握しやすくする為に導入した」ということであったが、ここで一つ考えてみて欲しい。
"マップ付きのパニック系ノベルゲーム"と聞いた時、"どういう"ゲームを連想するだろうか。ここは自分の主観的な考えが入ってしまうが、おそらく「戦術要素のあるノベルゲーム」なのではないかと連想するのではないだろうか?例えば、「タイラーがあの部屋にグリーンズが死体を引きずってもっていったと言っていたな・・・。じゃあ、あの部屋の通路は通らないのが安全的だからそれとは逆の方向に進んで貰おう。ところで逆って"どっち方面"だっけ?ちょっと"マップ"を見てみよう」そしてタイラーがプレイヤーにこう問いかける「アイツについて行って何をするつもりなのか確かめるべきかな?それとも"危険"だから引き返すべき?」と。こう考えてみてもやはり1作目が光っているように見える。というよりむしろ1作目の方がマップが必要であったことに気づくだろうか(まぁ、あの時はタイラーの装備が簡易的なもので緊急時であったから実装出来なかったという形で設定に準じておこう)。1作目では「日が落ちてきた・・・。"さっきから"山に向かって進んでいるけど、本当に"近づいて"いるのか分からないんだ・・・。まだ進むべきなのかな?でもそうしたら"野宿"できる場所を探さなきゃならない。それに風で足跡が消えてヴァリア号に戻れなくなるかもしれない。今すぐ"引き返す"べきなのかな?その場合、日が沈むまでにヴァリアに辿りつけることを祈るしかないけどね・・・」という選択を迫られる部分でプレイヤーは「さっきそこまで行く"途中に"別の宇宙船の残骸があったって言っていたな。進んでいるのか分からないのなら、日が落ちて方向が分からなくなる前に戻るべきだよな・・・。それに山に何があるか分からないし、何もない可能性もある。でも宇宙船の残骸にやっぱり何かあるかもしれないし野宿よりはマシなはずだ。よし、戻るべきだ。さて、"方向"は・・・」とそういう考え方をしたとしよう。この時このプレイヤーは無意識に頭の中でマッピングしていたはずである。こういうゲームにおけるマップという情報は"ヒント"になるはずであったにも関わらず、SNのタイラーは「今〜に向かっているところなんだ」と勝手にズカズカと進んでいき、しまいにはまた「待ち伏せされた・・・」などと・・・。つまりSNのマップ機能は生存に必要な情報(ヒント)として全く役に立っていないのである。言い換えれば、「今〜にいるよ」すなわち"そこにいる"などという言葉だけでも伝わるような情報を"わざわざ"視覚化しただけなのだ。実に「マップ」というより「くどい」という3文字が相応しいだろう。
1作目において制作元?が「1作目より2作目の方が面白いってことある?」とあたかも2作目(ここにおける2作目はSN※ライフライン2ではない)は「超大作だっ!」と言わんばかりのことを言っていたのが、実際は「ターミネーター2」というパッケージの中が「ターミネーター3」だったことが残念でならない。だが事実、非常に惜しい作品であったことは言うまでもない。何よりも惜しかったのは、ゲーム内でゲームらしく生かさなくてはならなかった要素を全く生かせていないあの「くどい」新機能だ。くどさが機能性を相殺してしまった。尚且つ、ノベルゲームにおいて話のプロットが思考不足だった場合、何が残るのだろうか。自分はその空虚さに失望した。だから自分にとってこのゲーム(SN)は"ゲームソフト"とは言えないただの「ソフト」のように思えてならない。
このレビューを最後まで読んでくださった方々、ありがとうございました。また、改めて長くなってしまい申し訳ありませんでした。分かっているとは思いますが、これはあくまでこの世界の中のたった一人のたかが一人の「自分」という人間の意見です。なので購入される前の「参考」として見て頂けると幸いです。
実際に自分の目で目撃してください。「視覚化された情報」ほど確かなものはありませんから。
YAMATO2010 about
Lifeline: Silent Night, v1.2